『思い出のマーニー』感想

長野グランドシネマズで米林宏昌監督による『思い出のマーニー』を観てきた。とてもよくできていて、上映中はどこも見逃せないほど引きこまれた。
マーニーが登場するだけで光り輝いて見える。杏奈だけではなくこちらの心までもが晴れるようだ。その場面までの細かな描写の積み重ね。それが説得力となって息が止まるような場面が生みだされている。古い屋敷の廃墟。ホラー寸前の妖しさが同居している。


秘密の友情。かけがえのなさ。思春期の少女の成長。あの一途で切なく危なっかしい感じ。今野緒雪『マリア様がみてる』に通じるものがある。


絵のタッチ。よく見ると背景の本の文字とかが潰れていたりして荒く描かれている。絵描きの場面がよくでてくる。ただの風景の絵ではない。湿っち屋敷。記憶が込められた絵。ベランダからの入り江の眺め。風景画への誘い。


音楽。とくに印象に残るというほど強烈ではない。ピアノの音が静かに主人公の感情に寄り添うように流れたりする。全体的に寄り添う感じ。ただマーニーのワルツ(子守唄?)の音楽は印象的で脳裏に残った。『パンズ・ラビリンス』の少女のハミングに似ているようなメロディ。悲しく和やらかで元気づけるようなところもあったような。
主題歌。プリシラ・アーンによる「Fine On The Outside」。これもいい。スザンヌ・ベガを思わせる。


映画『思い出のマーニー』公式サイト
http://marnie.jp/index.html


以下、ネタバレあり。
ちゃんと大人が描かれている。
杏奈の母親(杏奈は「おばさん」と呼ぶ)と医師の対話。母親が「杏奈がわからない」といったような台詞で不安を吐露するところ。ドラマなどで使い古された泣き方ではない、本当にこの作品のためだけに編み出された母親の姿という感じが出ている。単なる杏奈に対して理解のない母親ではない。もっと複雑で厚みのある人格を想像させてくれる。物語の最初と最後。杏奈と母親の関係性の変化がちゃんと描かれている。